2014年7月吉日
平成25年度活動報告書
館主 植田義浩
ギャラリー稲童が開館してはや4年が過ぎようとしています。これも偏に協力会の皆様のおかげです。今年度開催の事業につきましてご報告申し上げます。
(1)第6期常設展示:2013年4月~10月まで
昨年度の報告にもふれましたが、初めての試みとしてのアーティスト・イン・レジデンスをやってみました。芸術家が一定期間アトリエ棟に滞在して作品を作り上げ、その作品をギャラリーで展示する試みです。ハワイ在住の彫刻家日系3世ランディーさんがその第1号です。素晴らしい作品が数多く制作され、多くの皆さんに見ていただきました。アトリエ棟の活用方法として、今後もアーティスト・イン・レジデンスを行い、芸術家とのコラボを積極的に行います。
第6期常設展は原田脩お得意のデッサン、淡彩、水彩画の世界を展開しました。小倉高校美術部では顧問の吉松先生が水彩画の専門家でしたから、当時の部員は鉛筆デッサンと淡彩はお手の物でした。中でも原田は鉛筆デッサンが得意で、鋭い鉛筆さばきは群を抜いていました。現場に出向いて対象物と向き合い、鉛筆でその印象を切り取ることについては誰にもひけをとりませんでした。気韻生動した、漢詩の趣を画面から感じさせる作品群が数多く残されました。
この展示に合わせて、スケッチの旅を共有したかつての仲間が文章を寄せてくれました。ホームページに掲載されていますので、ぜひご一読ください。
(2)夏の稲童句会:7月14日開催
斎藤宗匠が博多から出向いてくれました。兼題は夏。
天の句: 遠山に 影一つ置く 夏の雲 (さぶ)
地の句: 夏草や 列車二両の 豊肥線 (翠)
蜜灯 梅雨の名残りや 置き土産 (幹夫)
(3)林望先生ギャラリー講演会:9月28日(土)行橋市教育委員会後援
毎年秋の林望先生(リンボウ先生)による講演会は今回で3回目。「日本人は月をどう見てきたか」、「懐かしきイギリスの日々」に続いて、今回は「『謹訳源氏物語』を書き終えて」の演題でした。全10巻におよぶ源氏物語の現代語訳を書き終えて、あらためて源氏物語の持つ深く豊かな文学の神髄を語って下さいました。当時の寝殿作りの様子を図に描き、実際の生活を想起させながらのお話しに皆さんは頷いたり、感動したり。あっという間の2時間でした。
(4)第7期常設展示:10月20日~2014年夏まで
第7期は「原田脩エチュードとタブロー」と題して、同じ画題の水彩作品と油絵の作品を並べてみました。現場で描かれたデッサンや鉛筆淡彩には作者の息遣いが聞こえるようです。現場で作成された数多くのデッサンを基礎にして油絵の作品が作られています。躍動するデッサンの線が原田脩独特の色に置き換えられ、新たな世界が形作られている様子が感じ取れます。
(5)坂田明さん来館:12月16日~18日
世界的なジャズミュージシャン坂田明さんがミジンコ写真展の下見に来館しました。アトリエ棟に2泊してメンバーとの交流会を開催しました。ギャラリーの様子がすっかり気に入ってくれて、写真展とミジンコ講演会さらにサックス演奏会までやろうと言うことになりました。興に乗った坂田さんがギャラリー会場で即興の演奏をしてくれました。幸運にも現場に居合わせた20人近い仲間が素晴らしい演奏に聞き惚れました。
(6)餅つき大会:12月22日
ギャラリーには臼と杵、さらには蒸籠まで常備され、何時でも餅つきが可能となりました。今年度は前回の坂田さんの歓迎餅つきに続いて3度目の餅つき大会です。地元スタッフの藤川さん、筒井さん、竹内さんの鮮やかな手並みと子供たちを交えた皆の力で、正月用の鏡餅もしっかりと用意できました。
(7)冬の稲童句会:2014年1月4日(土)開催
今回も斎藤宗匠にお出ましをお願いしました。兼題は新春・馬
天の句: 冬蜂は わが掌に 暖をとる (幹夫)
桜茶の 薄きあかりや 妻といる (芳正)
地の句: 霜の道 老馬は瞼 動かさず (ひろ)
天空を 遊ぶ馬見ゆ 銀の瓶 (翠)
(8)瀧月忌:3月21日(金)開催
東京芸大の学生によるクラシックコンサートを開催。
バイオリン:小林修子 ピアノ:大橋征人 声楽:竹内将人
新進気鋭の音楽家たちが来てくれました。小林さんはモーツアルトのヴァイオリンソナタを、竹内さんは日本の歌曲を大橋さんの伴奏で歌ってくれました。同日開催のバザー収益金10万余円を東日本大震災こども未来基金に寄付。
(9)坂田明ミジンコ写真展:5月11日~18日
「坂田明的宇宙 浮遊するミジンコ&ミュージック」と題してミジンコ写真展とミジンコ教室を開催しました。11日は坂田さんによる講演会と演奏会。130人ものお客様を迎え、坂田さんのユーモアたっぷりの講演とサックスや歌を交えたサカタワールドを楽しみました。
地元仲津中学、仲津小学校の生徒さん達140人が総合学習の一環としてミジンコ教室に来てくれました。独カールツアイス社日本法人が貸与してくれた高精度の光学顕微鏡から見える鮮明なミジンコに驚いていました。
※石垣がほぼ完成しました
トラック9台分もの石(大方が石垣用の間知石でしたが)の処置に苦慮していましたが、浅田庭師の発案、新納さんの努力によって駐車場まわりや山側の土止用石垣、またオブジェとして見事に活用できました。ぜひご覧ください。
※北海道からオブジェが到着しました
北海道在住の陶芸家上野さんがはるばると北海道からワゴン車に作品を載せてやってきました。公園の整備で伐り倒された樹齢100年を超える公孫樹の木を彫刻したもの。飾り気のない作品が原田の絵に調和しています。